昭島子ども放送局
「このお仕事をしていて大変なことは何ですか?」
「うーん...、朝...早く起きなくてはいけないことですね」。
今年の冬、取材に行った和菓子屋のご主人と子どもレポーターのやりとりだ。少し、困りながらも、正直に答えてしまうご主人の表情がカメラに収められている。もしかしたら、子どもにしか作り出せないと思える、クスッと笑える微笑ましい雰囲気だ。この雰囲気が「子ども放送局」の売りである、と私は思う。子ども放送局とは、子どもたちが自ら撮影、インタビュー、レポートを行って作る番組だ。大学生の私は、子ども達のサポート役として携わった。
昭島市にいくつか和菓子屋がある。その一つの和菓子屋のご主人は、カステラ作りを得意としている。ご主人が考案したカステラは、同じ昭島市で採れた、黄身が濃厚な卵を原料として使っている。今回、子どもたちはそのカステラ作りに挑戦したのだ。それだけでなく、冒頭にあったようにインタビューも行う。ご主人はもちろんのこと、ご主人のお父さんにもインタビューをした。子どもたちからすると「おじいちゃん」の年代だ。昔から、昭島市にあったお店で、おじいちゃんは昔の昭島の様子も語っている。子どもたちは、和菓子屋のおじいちゃんへのインタビューを通して、自分たちの住む町の歴史にも触れることができるのである。
子ども放送局は、子どもたちがメディアについて考えたり、実践することだけが目的ではなく、自分たちの住む地域について学んだり、その地域で今まで交流のなかった人と触れあうといった「地域再発見」「地域活性化」を一つの目的としている。
私は、昭島市以外の地域でも子ども放送局に携わってきたが、「地域活性化」という目的を達成するのは難しく、曖昧なものであるような気もする。一体どうしたら「地域活性化」と言えるのだろうか。その形というか、こういう番組を作って実際に変わったことはあるのだろうか。
子ども放送局に参加した当初、私は子どもたちの番組が完成できるように、サポートに必死になっていたが、少し経ってからそんなことを考えるようになった。
子ども放送局では放送だけでなく、出来上がった番組をDVDにして子どもに渡す。子どもたちは、嬉しそうに受け取ってくれる。そして、取材先である和菓子屋に届けに行った。ケーブルテレビ放送用に編集をした私は、和菓子屋さんのご主人と一緒に番組を観た。少し照れ臭そうだったが、「ありがとう」と喜んでくれた。ご主人の息子の赤ちゃんが、テレビに映っているお父さんを観て、一瞬唖然としていたのも印象的だった。すると、ご主人がカステラを買いにきたお客さんの話をしてくれた。その人は、番組に出演した子どもの親御さんらしい。一度は名前を名乗って来店したが、その後は「名乗らないで、でも、何回も来てくれているらしいよ」。
そう言えば、子どもの一人が話してくれた。「お父さん、あそこのカステラ気に入っちゃったみたい」。
子ども放送局を通して、地域の中で新しいコミュニケーションが生まれているのは確かかもしれない。それは、小さなものでなかなか形として表れることはなくても。子ども放送局が地域に目を向ける「きっかけ」になったみたいで良かったな、と思う。