本当に大切なこと
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二〇一〇年二月十八日、私たちは、東京都昭島市立東小学校の子どもたちと一緒に、ブルガリア留学生との国際交流授業について、子ども放送局でとりあげた。子ども放送局とは、小学生が企画、撮影、リポートを行い、大学生のアシストのもとで一つの番組を完成させるというプロジェクトだ。今回は、東小学校で行われた国際交流授業について、小学校六年生二人がリポートするのを大学生がサポートして、番組にまとめた。ブルガリアの民族舞踊を踊ったり、留学生が行った授業の中でキリル文字を書いてみたり、ブルガリアの伝統工芸・マルテニツアを作ってみたりする様子をまとめたものだ。番組は、第77回多摩探検隊『東小学校子ども放送局 ブルガリア国際交流授業リポート』として放送された。私は番組プロデューサーとして、企画を立ち上げる段階から制作に関わっていた。
企画があがったとき、私はディレクターと一緒に頭を抱えていた。「国際交流授業といってもどこにでもある単なる授業じゃないのか。それをどう描いたら番組にできるのだろう・・・」。そんな不安が浮かんでいたからだ。どんな番組にするか、何度も議論を重ねたが、不安は一向に解消されないまま、本番当日を迎えてしまった。
本番当日。朝早くから、沈んだ面持ちのまま、私たちは東小学校に入っていった。しかし、民族舞踊、ブルガリアからの留学生の授業と撮影を進めていくうちに、どんなときも子どもの笑顔が耐えないことに、驚かされることになった。
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初めて踊るブルガリアの民族舞踊。それを前にして、子どもたちは往左往していた。踊っているうちにどうしても足がもつれてしまう子や、転んでしまう子もいた。それでも、その表情からは、子どもたちが本当に楽しんでいることが分かった。授業のときには、留学生がおもむろに一本ずつ綿棒を配り始めた。そして、その綿棒を嗅いでみるように言う。番組のリポーターを務めた女の子二人もおそるおそる鼻に綿棒を近づけた。すると、そこからは、ブルガリア産のバラの香りがした。「うわっ、いい香り」。リポーター2人がカメラの前で見せた顔も、また笑顔だった。
撮影を通して、そのたくさんの笑顔を見ているうちに、私はハッと気が付いた。「自分は、番組ができるかどうかの不安を抱えているばかりで、本当に大切なことを忘れてしまっていたのではないだろうか・・・」と。そして、私はディレクターと話し合って、番組では子どもたちが心の底から楽しむ姿をそのまま伝えよう、と決めたのだ。それから、小学生と考えた番組の軸を元に、わたしたち大学生が番組を仕上げる作業に取り組んだ。夜遅くまで、ディレクターが編集したVTRを、私が見て意見を言い合う日々が続いた。そして、何とか番組を完成させ、多摩探検隊として放送することができた。
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番組制作を終えた今、私は「今回の子ども放送局で教えられたのは、むしろ私のほうだったんじゃないか」と思っている。形にとらわれすぎて、本当に伝えるべきもの、そして心の底から楽しむことを忘れていた。そんな私に、子どもたちの笑顔が、どんな時もまっさらな心で楽しむことの大切さを教えてくれたのかもしれない。
これからの人生のなかで、私はいくつもの壁にぶつかるだろう。それは、今回の子ども放送局で私が抱えた不安より何倍も大きなものなのかもしれない。しかし、それでも子どもたちが教えてくれた、心の底から楽しむことの大切さだけは忘れないようにしよう。東小学校の子供たちのいくつもの笑顔を思い出しながら、私はそう誓っている。